「全私学新聞 平成18年1月3・13日合併号」に掲載
結城富士見幼稚園 園長
鮎澤伊江
私は、国鉄(当時)の隅田川操車場の近所で育ちました。自宅前を昭和45年まで都電が走っていて、子どもの時から乗り物が大好きでした。いつのころからか、お庭に電車を置いて、劇場や図書館にしたいと考えていました。
そんな漠然とした思いが、幼稚園創立後しばらくして、『窓際のトットちゃん』の感動がきっかけとなり、実現へむけて大きく動き出しました。
そして昭和55年、念願かなって、客車(スハフ42式)を1両、地元の結城市を通じて国鉄より払い下げていただきました。
そこで始めたのが、人形劇です。当園の先生をメンバーとする人形劇団「つむぎ座」を設立、毎年2回、地元の子どもたちに生のお芝居「客車劇場」を上演しています。8年前からは「見るよりも演じてみたい!」という子どもたちの熱意で「つむぎ座キッズ」も生まれました。
客車内は本格的な照明器具や音響設備など、こだわりの本物志向。舞台は丸太で組み、木のぬくもりを味わえる雰囲気づくりを心掛けています。
また、「客車はどうやって幼稚園に来たの?」という子どもたちの疑問をヒントに、絵本『メルヘン列車出発進行!』の出版も実現できました。
モノを大切にする気持ちと環境へのやさしさがあれば、いろいろな形で再活用できることを、当園の客車は教えてくれています。
25周年を迎えた客車劇場は、多くの子どもたちの夢を乗せて、これからも走り続けます。